数刻後。
片刻之後。
エルバーノ王の前には、こぎれいになったペルルがいた。
出現在埃魯巴諾國王面前的,是一個變得整潔的佩魯魯。
食べ物と水分を十分に与えられ着替えを済ませても、
即使給了充足的食物和水分,更換了乾淨的衣服,
一向にいつもの様子に戻らないペルルを労わりながら、
佩魯魯也無法變回以往那活潑動人的樣子。
王はルナヘンテ山での信じがたい出来事を聞き出し、何とか把握しようとしている。
國王傾聽了在月之恩澤山所發生的軼聞後,遷思回慮地思索,努力地把握那令人難以置信的事情。
「ふむ…冒険者は怪物に深手を負わされ、倒れてしまったのだな?」
「唔…冒險者被怪物打敗,並身受重傷而倒下了嗎?」
ペルルは両膝を抱えて座ったまま、ぼそぼそと口を開く。
佩魯魯抱膝而坐, 絮絮叨叨的說道。
「ん…で、怪物が倒れたあいつに爪を振り下ろそうとしたら、どこからか光の矢が飛んできて…怪物が串刺しになったと思ったら、そのまま吹っ飛んで壁の向こうへ落ちてったの…」
「不…當怪物準備向倒下的冒險者揮爪時,不知道從哪裡飛來的光箭射向了怪物…當我以為怪物要被刺穿的時候,它便炸開,把怪物吹飛向牆壁,並跌落了下去…」
それを聞いたエルバーノ王は俯き、右手を自身の顎に当てながら、
聽到這消息後,埃魯巴諾國王低下了頭,右手托着自己的下巴,疑惑地問。
「むう、巨大な怪物を一撃で射抜く光の矢とは…人間業と思えんが、誰が放ったのか…とにかくそれで怪物はいなくなったから、そなたは冒険者のもとへ駆け寄ったと…彼の者に息はあったか?」
「唔,巨大的怪物被光箭一擊射穿…這不是人類能做到的,到底是進放的…無論如何,總之怪物消失了,當你趕往冒險者身邊時…他還活着嗎?」
その時の事を思い出したのか、ペルルは小さく丸まった身体をさらに小さくしながら、
回憶起那個時候的事情,佩魯魯小巧的身軀縮得更小了,
「わかんない…いくら声をかけても、あいつ、ピクリとも動かなかったし…どうしていいかわかんなくなって泣いてたら、急にあいつの身体が光り出して…」
「我不知道…他,不管我怎樣呼喊也沒有動…我不知道該怎麼辦,只能一直哭泣,突然間,他的身體散發出了光芒…」
「何?」
「什麼?」
現実離れした内容に王はペルルの方へ向き直った。
遠離現實的內容令國王看向了佩魯魯的方向。
ペルルはそのままの姿勢で言葉を続ける。
佩魯魯依舊保持相同的姿勢說着。
「…そのまま宙に浮いたかと思ったら、いきなり強く光ってそのまま消えちゃったの…」
「…他就這樣漂浮在空中,強烈的光芒籠罩着冒險者,之後他便消失了…」
王は再度俯き、右手を顎に当てながら、
國王再次低下了頭,右手托着下巴,
昔読んだ文献に書かれた奇跡に関する記述を思い出した。
想起很久以前讀過的文獻記載。
奇跡が起こる際、そこには光があり、その光のほとんどは神の加護の証である。
當奇積發生之時,也會有關於光的描述,大部分煥發光芒的事件幾乎也是神明加護的證明。
光に包まれて消えたと言う事は、神の手でどこかに庇護されているのではないか。
包裹在光中消失的話,這不就意味着受到神的保護嗎?
冒険者がかなりの痛手を被った事は間違いないだろうが、死んでしまったと考えるのは早計かも知れない…
冒險者可能遭受了很多苦難,但認為已經死了可能言之過早…
王は、ペルルにその事を告げようとして、直前で思いとどまった。
當國王試圖告訴佩魯魯他的想法時,他突然回心轉意。
神の加護の光と言うのは、あくまでも昔の文献の中の話だ。
神明加護之光的寓言,終究是古老文獻中的一個故事罷了。
冒険者が確実に生きていると言う証にはならず、ペルルをぬか喜びさせて後で失望させる事にもなりかねない。
無法證明冒險者是否還活著,佩魯魯可能會感到高興,但也可能會期望落空。
小さく丸まって左右に体を揺らしているペルルを慰め、安心させてやりたい衝動にかられながら、エルバーノ王はそれを我慢した…
對於眼前捲縮成小球左右遙晃的佩魯魯,那可能只是令她安心一時的慰藉,埃魯巴諾國王只能把呼之欲出的想法硬咽回去…
「ペルルよ、少しは外に出てみてはどうだ?そのままではそなた自身にカビが生えるぞ?」
「佩魯魯啊,多少出去外面走走散散心你覺得怎樣?一直窩在這裡可是會發霉的喔?」
エルバーノ王は部屋の隅で転がっているペルルに声をかけた。
埃魯巴諾國王向在房間角落的佩魯魯喊道。
エル・スカーロに戻ってから数日経つが、
回到艾爾.斯卡羅以來已經過去了幾天,
ペルルはいまだに魂が抜けたような状態でボーっとしたまま、ほとんど動かない。
佩魯魯依舊是魂不守舍的狀態,幾乎沒有動過。
「冒険者との旅は息つく間もない冒険の連続だったろうから、そこからいきなり解放されて腑抜けるのはしかたなかろうが、ずっとそのままというわけにもいくまい。自身に何か刺激を…」
「雖然與冒險者一起的旅途經歷了一連串的冒險 ,突然的離別是令人難以釋懷及接受,但一直這樣下去對身心也不好,你需要振作起來啊…」
王がそう言いかけた時、広間へ入ってきた衛兵が大股で王のもとへ進んできて跪いた。
當國王這樣說着時,衛兵進入了大廳,並在國王御前跪下。
「申し上げます。街の住人であるフィレーシアなる者が、王のお力をお借りしたいと嘆願にやって来ておりますが、いかがいたしましょう?」
「稟報。住在城裡的居民費雷西亞,前來懇求國王的幫助,請問陛下意下如何?」
「一般的なもめ事は衛兵に解決を要請する決まり…街の住人なら知らぬはずはあるまい。にもかかわらず、衛兵ではなく私の力を借りたいとは穏やかではないな…よかろう、これへ連れて参れ。」
「一般的事情也是交給衛兵去解決的…住在這城市的居民也應該知道吧。儘管如此,她不是找衛兵,而是想藉尋我的力量,代表這事並不單純…好吧,帶她進來。」
衛兵は一礼して広間を出て行き、
衛兵鞠躬後便走出了大廳,
しばらくして一人の女性を連れて戻って来た。
過了一會便帶了一位女性回來。
「私、街に住まい致しますアルナ家のフィレーシアと申します…」
「我是住在城內阿爾納家族的費雷西亞…」
素朴だが高級な布で作られた服と縦ロールした銀髪が育ちの良さを窺わせ、眼鏡が知的な印象を与えるエルフ族の女性は、
朴素但用優質的布料製成的衣服和一頭保養良好的長捲銀髮,眼鏡賦予知性印象的艾路菲族女性,
広間に入るなりエルバーノ王へ丁寧な一礼をして口を開いた。
當她進入大廳時,向埃魯巴諾國王莊重地行禮,然後才開口。
「エルバーノ王におかれましては、ご機嫌麗しゅうお過ごしの事と御慶び申し上げます。わたくしごときのお願いで王のお手を煩わせるなど、あまりにおこがましいとは存じますが…」
「尊貴的埃魯巴諾國王,恭賀你萬事如意,今日冒昧前來打擾你了,我知道這是一個唐突的請求…」
「構わぬ。何があった?申してみよ。」
「沒有關係。發生了什麼事?告訴我吧。」
嘆願の内容のみを聞くべく、王は儀礼的な前口上を遮った。フィレーシアもそれに気づき、
為了聽取請願內容,國王省略了過多的繁文縟節。費雷西亞也注意到這一點,
「ありがたき幸せ。実は最近、わたくしの周辺で不可解な現象が頻発しておりまして…家具が勝手に動いたり、屋敷の者が突然昏倒して苦しみ出したりと、常識では考えられぬ事ばかり起こるものですから、魔法だけでなく、様々な法術、呪術の第一人者たるエルバーノ王におすがりしに参った次第でございます。」
「感恩戴德。其實最近,在我周圍經常發生不可思議的現象…家具莫名其妙的自行移動,宅第的人們受到驚嚇而昏倒,發生了很多常理無法解釋的現象,魔法領域、各種法術、呪術的領導者埃魯巴諾國王,希望能得到你的協助。」
「なるほど、そなたの願いはわかった。何とかしようにも、不可思議現象の詳細を調査せねば方策は立てられんが…私も他に執務があり、直接調査に赴くのは難しい。どうしたものか…」
「我明白了,我了解你的訴求。無論如何,我們要先調查清楚神秘現象的因由,才能制定出應對辦法…但我繁務纏身,難以直接調查。該怎麼辦呢…」
王は右手を顎に当てて考え込み、ふと顔を上げた。
國王右手托着下巴憾入沉思,突然抬起了頭。
その視線の先には広間の隅で呆けているペルルが。
視線的盡頭是在大廳角落呆若木雞的佩魯魯。
ふいに顎から手を放して大股で彼女に近づき、かがんでその顔を覗き込む。
放下了托着下巴的手,徑直地走近她旁,並蹲下看着她的臉。
「ペルル、ペルルよ!すまんが頼まれてくれぬか⁉」
「佩魯魯,佩魯魯啊!可以拜託你嗎!?」
王の予想もしない大きな声に、
國王得到預料之外的大聲回應,
「へ、ふぇっ?な、何?」
「誒,什麼?什麼?」
腑抜けていたペルルもさすがに顔を上げる。王はなおもペルルの顔を覗き込んだまま、
佩魯魯抬起了頭。他們面面相覷,
「今から、このフィレーシアの家へ行き、どのような不可思議現象が起こっているのかを調査して来てほしいのだ。もし、手に負えるようなら、そのまま解決してくれても構わんぞ。何せ、そなたも先日まで、あの冒険者と様々な冒険をかいくぐって来た人物なのだからな!」
「由現在起,前往的房子,希望你能幫忙調查正在發生的神秘現象。如果你可以處理,便解決它吧。不管如何,在這之前,你也是跟冒險者一起經歷了各種各樣冒險的人啊!」
「冒険者」と言う言葉を聞いて、ペルルの顔が少し歪む。
聽到「冒險者」的詞彙,佩魯魯的容顏多少有此扭曲。
「だから…かいかぶり過ぎだって。あいつがいろんなことを解決してただけであって、あたいはな~んにもしちゃいないの…それに、あたいはまだな~んもやる気が起きないんだってば…」
「所以說…你言過其實了。他解決了很多事情,我…我什麼也沒做…而且,我…我沒有勇氣去面對…」
それだけ言うとゴロッと床に寝転がる。
就這樣,佩魯魯捲縮在地板上。
それを見て王の顔に微笑みが浮かぶ。かがめていた身体を起こして、フィレーシアに向き直り、
看着這樣的她,國王莞然一笑。抬起了蹲下的身軀,轉向了費雷西亞,
「フィレーシア、そなたはアルナ家の者だったな?下世話な話で申し訳ないが、貴族は最近資産が目減りしている家が多いとも聞く。アルナ家はどうだ?」
「費雷西亞,你是阿爾納家族的一員吧?我有所耳閒,最近很多貴族的財產也有所減少。阿爾納家怎樣了?」
フィレーシアは一瞬不可解そうな顔をしたが、
費雷西亞一瞬間露出困惑的面容,
ペルルが寝転がったまま聞き耳を立てているのを見てにっこり笑い、
但她看到躺在地上的佩魯魯立即興致勃勃地豎起耳朵側耳傾聽的模樣,令她啼笑皆非的嘴角上揚,
「ご心配、痛み入ります。ですが、我が家は荘園もございますし、そこで収穫される野菜を商ったりもしておりますゆえ、ごくわずかではではございますが、資産は増えておりますわ。今回の不可思議現象が解決しましたあかつきには、お手を煩わせたお礼として、相応の準備をさせていただく所存でございます。」
「有勞費心卑人苦況。但是我們家族有一座莊園,能夠收穫到一些蔬菜出售,雖然不多,但資產也有在增加。作為勞煩閣下解決這次神秘現象的報答,我們會竭誠準備出相應的謝禮。」
フィレーシアの言葉をペルルがしっかり聞いたと判断したところで、エルバーノ王は寝転がっているペルルに改めて声をかけた。
判斷出佩魯魯聽到費雷西亞的話,埃魯巴諾國王再次向躺在地上的佩魯魯說。
「ペルルよ。もう一度頼む。フィレーシアの家の不可解現象の調査をしてほしいのだが…」
「佩魯魯啊,我再問一遍,你願意前往阿爾納家調查神秘現象嗎…」
王の言葉が終わるか終らぬかのうちに、ペルルはなるだけゆっくりと起き上り、ついてもいない埃を払うふりをしながらおもむろに口を開いた。
國王話音剛落,佩魯魯便緩步而起,拍走了身上的灰塵並開口。
「王様のご厚情でここに置いてもらってるんだから、行かないわけにはいかないわよね。いいわよ、調査に行ったげる。けど、あたい冒険者にくっついてただけだから何にもできないわよ?」
「我能留在這裡也是承蒙陛下厚愛,所以我不能不去。好的,我會去調查的。但我只是一直跟在冒險者身邊的人,能不能成功我不保證喔?」
そっけないペルルの返事に、王は何度も満足そうにうなづく。
對於佩魯魯的回答,國王滿意地點了點頭。
かくして、冒険者と離ればなれになったペルルの小さな冒険譚が始まった。
就這樣,與冒險者分别的佩魯魯開始了她的小小冒險譚。
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